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国立公園(国家公園)とはその名の示すとおり、国の代表的な自然公園または人と文化の史跡であり、保護が提唱されている天然資源の希少性や枯渇性資源を深く理解できるエリアです。1872年にアメリカが「イエローストーン国立公園」を世界初の国立公園に指定してから、これまでに世界で3,800か所以上が国立公園に指定されています。100年近くの進化を経て、先進国における国立公園の設立は天然資源と文化遺産の保護を促進する一種の文明的運動となり、天然資源の保護研究やレクリエーションなどにおいて最高レベルで利用されています。

台湾では1961年から国立公園と自然保護を推進し始め、1972年に「国家公園法」が制定されると、墾丁、玉山、陽明山、太魯閣、雪霸、金門、東沙環礁、台江、澎湖南方四島の計9か所が国立公園として次々に設立されました。国立公園を効果的に運営・管理するために、内政部の管轄下に国家公園管理処が設けられ、国の資産を保護しています。s

雪覇国家公園は台湾本島の中北部に位置し、高山が立ち並ぶ雄大な景色と豊富な天然資源に恵まれています。日本統治時代の昭和12年(1937年)には、この地域と太魯閣を合併した次高太魯閣国立公園の設立が議論されていましたが、太平洋戦争の勃発により調査研究の段階にとどまりました。1979年、行政院により「台湾地区総合開発計画」が承認され、雪山、大霸尖山地区が国立公園の予定地としてリストアップされました。内政部は1987年からこの地域における天然資源の調査、分析、研究を始め、国立公園の設立価値と必要性が十分にあると判断したため、行政院に「雪覇国家公園計画範囲」を申請し、1991年3月1日から実施する旨が内政部から発表されました。「雪覇国家公園計画」の策定後、行政院に再申請し、1992年3月1日に台81内07620号函で承認され、1992年3月1日から実施する旨が内政部から発表されました。同時に雪覇国家公園管理処が設立され、1993年3月1日には雪覇国家公園警察隊が組織されました。

汶水遊客中心汶水ビジターセンター

本管理処は今後の計画や運営管理の基礎となる敷地内の天然資源、人と文化の史跡を積極的に調査研究しています。現在の主な業務は、生態系の保全と研究の強化、解説や教育による普及活動です。国立公園に必要な建設を順調に完成させ、保全、エデュテインメント、研究の3大目標の達成を目指しています。

雪覇国家公園の範囲は、雪山山脈の尾根を境に東は羅葉尾山、西は東洗水山、南は宇羅尾山、北は境界山まで広がります。総面積は76,850ヘクタールに及び、新竹県五峰郷と尖石郷、苗栗県泰安郷、台中市和平区にまたがる高山型の国立公園です。

大安渓の谷にある雪山の主峰は標高76m~3,886mで、高低差が3,000m以上あります。さらに高山や河川、複雑な地形が交錯しているため、雪覇国家公園には見飽きることのない山と川の景色が無限に広がっています。起伏のある山々の連なりを見上げ、曲がりくねった静かな歩道を歩くと、四季折々の魅力的な姿や風景を常に楽しむことができます。

白耳畫眉ミミジロチメドリ

文献には、400年前の台湾は「緑が生い茂る平原、延々と続く木々の海、シフゾウが群れる」美しい島であると記録されています。しかし、100年近くの経済発展を経て、島の生態資源は深刻なダメージを受けています。多くの人々が都市や村に住んでいる現在、元々この地に生息していた野生の動植物はどこへ行ったのか考えたことがありますか?そのため、天然資源の保全は雪覇国家公園の設立における最も重要な機能の一つとなっています。台湾本来の青々とした山と川を保護し、何世代にも渡って受け継いでいくことを目指しています。雪覇国家公園で3分の2以上の面積を占める生態保護区と特別景観区は、天然資源と生物種の保護機能を果たしています。

「自然保護区」の厳しい制限に比べ、国立公園では生き生きとした興味深い解説や大自然そのものを生きた屋外教室にすることで、旅行者をエデュテインメントの生態の旅に導くことができます。また、「森林遊楽区」の目的とは異なり、解説システムを導入することで、旅行者は自然との向き合い方を理解し、人間が自然よりも優れているという考えを改めることができます。国立公園には、人工的に植えられた草花や人工的な施設はなく、あるのは景色に溶け込んだ施設や解説パネルのみです。そのため、旅行者はより自然に親しみ、大地本来の姿を理解することができます。雪覇国家公園はこのコンセプトに従い、保護目標に違反したり本来の自然生態系を破壊したりしないという原則の下、質の高い休憩とレクリエーションの場を提供しています。また、旅行者が自然に関する情報を得られるよう、武陵、観霧、雪見の3か所の遊憩区にビジターセンターを設立しています。

雪覇国家公園はまさに自然の博物館であり、常に大自然の神秘、動植物の生態の変化、壮大な景色が広がっています。いつでも自然科学の研究や屋外環境での教育の機会を得ることができます。雪覇国家公園は、主に公園の核となる資源エリアをリストアップし、完全な姿でかつ広大な面積の自然環境が本来の生態系を維持できるよう保護し、雪覇国家公園の特徴を永遠に残すことができるよう運営管理を行っています。天然資源の現状と今後の変化の傾向を理解できるよう、雪覇国家公園は長期的な保全モニタリングシステムを計画しています。敷地内の資源の登録と研究により、麗しいフォルモサの土地の保存を目指しています。

台湾はユーラシアプレートとフィリピン海プレートが接する場所にあり、100万年にわたる絶え間ない造山運動や地層の圧縮により数々の高山々が形成されました。雪山山脈は中央山脈の西に位置し、北東—南西に広がっています。雪山山脈は180km以上連なっていますが、大漢渓、大安渓、大甲渓の浸食により、その地域は北部の阿玉山階段山地、中部の雪山地塁、南部の埔里陷落地帯に分かれています。雪覇国家公園は雪山山脈の最も重要な部分である「雪山地塁」にあります。地塁内には北から南にかけて大霸尖山、武陵四秀(品田山、池有山、桃山、喀拉業山)、雪山、志佳陽大山、大剣山、頭鷹山、大雪山など、3,000m以上の高山が51座あり、19座が台湾百岳に選出されています。その中で最も代表的なのが雪山と大霸尖山です。

大霸尖山は標高3,492mで、台湾の古書では「熬酒桶山」と記載されています。その特殊な形と壮大な姿から雪山地塁の北側で最も目立つ山となっており、「世紀の奇峰」と評されています。ここには、タイヤル族とサイシャット族の祖先が誕生した霊峰であるとの言い伝えがあります。わずか700mの距離にある小霸尖山と合わせると両耳のような形になるため、タイヤル族の人々は「双耳嶽」と呼んでいます。

東霸尖山東霸尖山

雪山は標高3,886mで雪山山脈の最高峰であり、台湾で2番目に高い山です。なお、「雪山」という名前はタイヤル族の人々が呼んでいた「Sekoan」を音訳した「雪高翁山」に由来しており、後に「雪翁山」または「雪山」に略されました。タイヤル族がつけた名前は、南側の岩壁が垂直に崩れ落ち、縦方向の裂け目ができた特殊な「岩壁の裂け目」の地形を意味しています。

雪山の周りで最も目立ち、最も話題になる地理的景観が大崩壁(切り立った崖)です。雪山主峰北東の下には長楕円形の窪地が北東に広がっており、日本の地理学者は圏谷(カール)であると考えています。

北稜角北稜角

雪山地塁は雪山を中心に放射状に分岐しており、稜脈は大きく主稜(大雪山稜脈)、南支稜(雪剣稜脈)、北稜(雪霸稜脈)、北東稜(桃山稜脈)、南東支稜(志佳陽大山稜脈)、東支稜(雪山東峰稜脈)の6つに分かれています。その中で布秀蘭山の近くにある北稜から東に分岐する稜脈は、品田山、池有山、桃山、喀拉業山から蘭陽渓にまたがる有名な「武陵四秀」です。また、雪山から大霸尖山の南北に10km以上伸びる尾根は雪山で最も高い稜脈となっており、登山家、探検家、原住民の文化活動において常に崇められてきました。大霸尖山に初登頂した沼井鐵太郎が賞賛の念を禁じえず、「聖なる稜線、大霸尖山ー次高山の真正のトラヴァース(縦走)、果たして何人がその栄誉を荷ひ、その真美を語り得るだらうか」と書き記したことから、1928年以降、この区間の尾根は「聖稜線」と呼ばれるようになりました。

雪山山脈は主に始新世から中新世のスレートとメタ砂岩の地層で構成されており、始新世から中新世における軽度の変成岩が地層に露出しています。南東から北西につれてて変成の程度が徐々に低くなっているため、雪覇国家公園の岩石は主にメタ砂岩、硬質頁岩、スレートとなっています。

雪山一號
雪山一號

更新世からの造山運動で南東からのフィリピン海プレートが台湾東部でユーラシアプレートとぶつかり合った影響で、褶曲と高角逆断層が最もよく見られる地質構造となっており、中でも武陵四秀の品田山では褶曲作用による地質景観が最も顕著です。雪山の東峰からは、品田山の鋭く曲がった箱型褶曲(box fold)と、北東から南西へ傾斜、滑動する地層がはっきりと見られます。

大霸尖山とその南西にある小霸尖山(標高3,418m)は、標高約3,300mの水平な岩盤の上に並んでいます。この酒樽のように見える大霸尖山と小霸尖山はどのように形成されたのでしょうか?もともとは地質構造と地形の相互作用によって形成されました。大霸尖山と小霸尖山の下にある地層は砂岩とスレートの互層で形成されていますが、山頂は砂岩と頁岩の互層で形成されています。一般的に傾斜が緩やかで厚い互層の堆積岩の地域では、その地形の特徴として階状の斜面が見られることが多く、砂岩は耐食性が比較的高いため、平らな山頂と断崖の地形が残されています。砂岩層の下の頁岩は耐食性が比較的低いため、斜面も緩やかになります。大霸尖山と小霸尖山の地形の岩相のほか、節理の影響も受けて形成されています。やや水平の砂岩層には節理が非常に多く見られ、地表水が節理に沿って浸み込みやすいため、一旦凍結するとその凍結膨張により生まれる張力で岩石の崩壊が加速します。このようなくさび作用は、通常地表から上に向かって徐々に発達し、長い時を経て上が細く下が太い地塁が形成されます。

大小霸尖山地質圖大霸尖山と小霸尖山の地質図
司界蘭溪司界蘭渓

雪覇国家公園における河川の主な分水界は大霸尖山の南から大雪山の尾根と布秀蘭山から東に伸びる支脈(武陵四秀)であり、河川はこの「人」の字の形をした稜線と北西の山脈により4つの流域に分類されています。北東は淡水河源流の集水域、南東は大甲渓流域、西は大安渓流域、北西の隅の榛山と楽山の北側は、頭前渓支流の坪渓集水域に属しています。「森は水の故郷」であり、広々と生い茂る森の涵養によって台湾東部、北部、中部地域の飲用水の水源となっているため、高山の集水域における水源の涵養、水と土壌の保全が非常に重要となっています。

淡水河の源流である塔克金渓(泰崗渓)と薩克亜金渓(白石渓)は大霸尖山一帯に源を発しており、ほとんどは峡谷の地形であまり蛇行しておらず、典型的な上流の河谷となっています。

大甲渓は全長120km以上で、敷地内には七家湾渓、司界蘭渓、志楽渓、匹亜桑渓などの支流が順に流れ込み、台湾最大の渓谷が形成されています。河流の作用が盛んなため、山に囲まれた曲流、環流丘陵、佳陽の扇状地、河岸段丘、なだらかな肩状の山稜など豊かな地形や風景を見ることができます。

大安渓流域は雪霸国家公園の面積のほぼ半分を占めています。源流の馬達拉渓が蛇行して南西に下り、雪山渓、大雪渓、北坑渓に流れ込んで大安渓になり、その後、無名渓、南坑渓と合流して国立公園の敷地を離れます。中でも馬達拉渓は、タイヤル族による原名が「褐色の濁った水」を意味しており、川の中で赤褐色に染まった礫石を見て驚くことでしょう。

観霧地区の観霧瀑布、榛山瀑布、大鹿林道の東線瀑布と武陵地区の桃山瀑布(別名:煙声瀑布)には魅力的な水文学が見て取れます。中でも桃山の山腹にある桃山瀑布は落差約50mで、階状の岩壁に沿って2段階に流れ落ちるのが最大の特徴です。

全島最高水池——翠池觀台湾で最も標高の高い池-翠池
注入七家灣溪的高山溪七家湾渓に流れ込む高山渓

台湾の高山には湖があまりありませんが、敷地内の雪山と翠池山の鞍部の近くには標高が最も高く、人々が誇りとしている「翠池(標高3,530m)」があります。その他、翠池の北西約700mの下翠池、志佳陽大山の南東の斜面の瓢箪池(別名:乳羊池)、武陵四秀の新達池、品田池などがあります。

広大な敷地面積を持つ雪霸国家公園の気候は、暖温帯、冷温帯、亜寒帯に及んでいます。気象分区においては、敷地内の北西の山岳地帯と中部西側の山岳地帯を2つの気候帯に分けることができます。北西の山岳地帯に属する大安渓流域、大漢渓上流を含む雪山の主尾根の北に位置するエリアは、主に南西モンスーンと台風による豪雨の影響を受け、年間降水量は約2,500mm以下となっています。雪山の主尾根の南、思源唖口の西に位置し、中部西側の山岳地帯に属する大甲渓流域の年間降水量は地形により大きく異なります。雪霸国家公園全体の年間降水量は平均約1,500mm~3,000mmで、5月~10月に降水量が多くなります。

雪霸国家公園の気候は山岳地帯の地形、稜脈の分布、渓谷の水蒸気の影響を受けやすく、四季の気候の変化が非常にはっきりとしています。春雨が降る初春や梅雨の時期になると、山岳地帯は霧雨が降ったり一日中霧で覆われたりします。夏は台風や対流性の驟雨が襲います。秋は高気圧に覆われて清々しくなりますが、大陸から冷たい気団が南下してくると気温が急激に下がり、早朝は霜で覆われ、時々雪が降ることもあります。極寒の冬は積雪により通行が困難になり、凍結や雪のために閉山されることも多いです。

山岳地帯の天気は日変化も大きく、夏に午前は晴れ渡っていても、午後になると雲や霧に覆われることが多く、降水確率は50%以上になります。夜は急激に冷え込み、特に3,000m以上のエリアでは気温が0℃前後になり、最も暖かい7月でも零下3.2℃の記録があります。